修道士ライフ
IHS ベツレヘム修道会 / Bethlehem Religious Order
Monastic Life — 私たちの日常と祈りの時間
はじめに――修道士ライフとは何か
「修道士」という言葉を聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、石造りの回廊を歩く無言の人々、夜明け前から続く長い祈りの時間、外の世界から切り離された厳格な生活、そういったイメージかもしれません。
それは間違いではありません。修道生活の本質には、確かにそうした厳格さ・規律・沈黙が存在します。本会もその伝統を深く尊重しています。
しかし同時に、本会は問いかけます。修道的な生き方は、石造りの修道院の中にいなければ実践できないものでしょうか。家事をしながら、子育てをしながら、日々の生活の中で働きながら、「祈りながら生きる」ということはできないでしょうか。
答えは、できます。
IHS ベツレヘム修道会の修道士ライフは、現代の生活――特に、家庭を持つ女性・主婦・子育て中の方々の日常――と深く親和性を持つ形で設計されています。台所に立つことが祈りになり、子どもに食事を作ることが奉仕になり、夜の静けさの中で聖書を開くことが観想になる。そういう修道生活のあり方を、本会は提示します。
参考としているのは、イタリアの現地カトリック修道会、とりわけ女性修道会の伝統です。厳格な祈りの時間を守りながら、同時に温かさ・やさしさ・生活の美しさを共同体の中に宿らせる。そのバランスが、本会の修道士ライフの目指す姿です。
本会の修道士ライフの特徴
IHS ベツレヘム修道会の修道士ライフには、伝統的な修道生活との共通点と、本会固有の特徴があります。
共通点として、日課(聖務日課)の実践、祈りの時間の厳守、聖書・霊的書物の読書(レクツィオ・ディヴィナ)、共同体への奉仕、沈黙の時間の確保があります。
本会固有の特徴として、現代の生活環境との調和、遠隔・分散型の共同体形成、創作活動と祈りの一体化、家庭生活・主婦的生活との親和性、女性的・やさしい共同体文化があります。
本会の修道士ライフは、「完璧にやること」よりも「続けること」を重視します。一日の祈りの時間を守れなかった日があっても、翌日また始める。それが本会の修道的生活の基本的な態度です。
一日の流れ――標準的な修道士ライフの日課
本会の日課は、イタリアの修道会の伝統に倣いながら、現代の生活に適応した形で設計されています。以下に示すのは標準的な一日の流れです。各自の生活環境に応じて柔軟に調整することが認められています。
朝の時間 / Mattutino(マトゥティーノ)
起床後、最初に行うことは祈りです。
これは長い祈りである必要はありません。ベッドから出て、顔を洗い、窓の前に立つ。その短い時間に、今日という一日を神に捧げる言葉を心の中で、あるいは声に出して唱えます。
朝の祈りは本会において最も重要な日課のひとつであり、ここだけは生活の忙しさを理由に省略しないことを、メンバーに求めます。子どもが起きてくる前の5分でも、台所に立ちながらでも、通勤途中の電車の中でも構いません。朝、目が覚めたとき、最初の意識を神に向けること。それが朝の祈りの本質です。
推奨される朝の祈りの内容として、本会が提供する朝課(ラウデス)のテキストの朗読または黙読、聖書の一節の読書と短い黙想、その日の予定・仕事・関わる人々のためのとりなしの祈りがあります。
所要時間の目安は最低5分、推奨15分から30分です。
午前の時間 / Ora Terza(オラ・テルツァ)
午前9時頃、短い祈りを挟みます。
イタリアの修道会における「第三時課」に相当するこの時間は、仕事・家事・育児が本格的に始まる時間帯です。本会ではここに「仕事の祈り」を置きます。
今から始める作業・今日関わる人々・今取り組む制作物のために、短く祈ります。「この仕事を通じて、誰かの役に立てますように」という意識を持ってその日の活動を始めることが、修道士ライフにおける「仕事」の位置づけです。
家事をしている方であれば、今日も家族のために食事を作り、掃除をし、洗濯をするという行為を、愛の実践として意識的に捧げる時間です。主婦の仕事は修道的な奉仕と本質的に同じ構造を持っています。本会はそのことを強調します。
所要時間の目安は2分から5分です。
昼の時間 / Ora Sexta(オラ・セスタ)
昼食の前後、沈黙と感謝の時間を持ちます。
イタリアの修道会では、食事は共同体の重要な時間として位置づけられています。本会においても、食事は単なる栄養補給ではなく、いのちへの感謝・大地の恵みへの感謝・食事を作った人への感謝を意識する時間です。
子育て中の方であれば、子どもと一緒に食事の前に短い感謝の言葉を言うことが、この時課の実践になります。一人で食事をする方であれば、食事の前に一瞬手を合わせて感謝する。その静かな習慣が、修道的な生活の質を日常の中に織り込んでいきます。
昼の時間にはもうひとつ、可能であれば短い聖書の読書または霊的書物の読書を行います。15分の昼休みでも、子どもが昼寝をしている間でも構いません。本会が月ごとに提供するレクツィオ・ディヴィナ(霊的読書)のテキストを用いることを推奨しています。
所要時間の目安は食事前後の感謝1分、霊的読書10分から15分です。
午後の時間 / Ora Nona(オラ・ノナ)
午後3時頃、本会において特別な意味を持つ時間です。
キリスト教の伝統において、午後3時はイエス・キリストの死の時刻として記念される時間です。イタリアの修道会では、この時間に十字架の前に立ち、キリストの受難を黙想する習慣が守られています。
本会においてもこの時間を特別視します。ただし、形式は柔軟です。仕事の手を止めて一瞬目を閉じる。「いのちのために死んだ方を覚えます」とひとこと心の中で言う。十字架のペンダントに手を触れる。そういったシンプルな形での実践を推奨しています。
子育て中の方であれば、子どもとともにこの時間を過ごすことができます。「今日も生きていること、家族がいること、感謝しようね」という言葉で子どもに伝えることが、信仰教育の最もシンプルで力強い形のひとつです。
所要時間の目安は1分から5分です。
夕方の時間 / Vespri(ヴェスプリ)
夕暮れ時、夕の祈りの時間です。
イタリアの修道会において、ヴェスプリ(晩課)は一日の中で最も美しく、最も感情的な深みを持つ祈りの時間として知られています。夕日が沈むこの時間に、共同体が集まって詩篇を歌い、感謝の祈りを捧げる。その美しさは、多くの修道会の伝統に共通しています。
本会においても、夕方の祈りは一日の中で最も豊かな時間として位置づけます。夕食の準備をしながら、子どもをお風呂に入れながら、窓から夕日を見ながら。その時間に、今日一日の出来事・出会った人々・感じた感情を神の前に差し出します。感謝でも、疲れでも、悲しみでも、怒りでも、すべてを正直に持ち込むことができる時間です。
本会が提供する夕の祈りのテキストには、詩篇の一節・マニフィカト(マリアの賛歌)・その日の感謝と悔い改めの祈りが含まれます。
所要時間の目安は10分から20分です。
夜の時間 / Compieta(コンピエータ)
就寝前、一日を終える祈りです。
イタリアの修道会における終課(コンピエータ)は、夜の静けさの中で行われる、共同体の最後の祈りです。本会においては、就寝前の15分から30分を、一日の締めくくりの聖なる時間として守ることを推奨します。
この時間に本会が推奨する実践として、今日一日の振り返り(良かったこと・感謝・反省・悔い改め)、明日のためのとりなしの祈り、聖書または霊的書物の短い読書、そして沈黙の中での黙想があります。
夜の祈りは本会において、朝の祈りと並んで最も重要な日課として位置づけられています。どんなに疲れた日でも、この時間だけは持つことを、メンバーに求めます。子どもが寝た後の静かな時間、あるいは就寝前にベッドの中で。場所も姿勢も問いません。ただ、一日の最後の意識を神に向けること。それが夜の祈りの本質です。
所要時間の目安は15分から30分です。
週ごとのリズム
本会の修道士ライフには、日課に加えて週ごとのリズムがあります。
日曜日は、本会において最も重要な日です。可能な方は礼拝・ミサへの参加を推奨します。礼拝への参加が難しい環境にある方は、日曜日の午前中に通常より長い祈りの時間を確保することを推奨します。日曜日は可能な限り仕事・制作・日常の雑事から距離を置き、休息・読書・祈り・家族との時間に充てる日として守ります。
水曜日は本会において「制作の日」として位置づけます。この日を、自分の創作活動・芸術・音楽・執筆に意識的に時間を割り当てる日とします。創作は本会において祈りの一形態であるため、水曜日の制作時間は修道士ライフの一部として位置づけられます。
金曜日は「断食と奉仕の日」です。イタリアのカトリック修道会では、金曜日に何らかの小さな断食・節制を行う習慣があります。本会においても、食事を一食減らす・甘いものを控える・SNSを断つなど、各自の生活に合った形での小さな節制を金曜日に行うことを推奨します。その節制を通じて浮いた時間・資源を、誰かへの奉仕・祈り・寄付に充てます。
主婦・家庭人のための修道士ライフ
IHS ベツレヘム修道会は、家庭を持つ女性・主婦・子育て中の方々が、修道的な生き方を実践するための特別な支援を提供します。
家事は奉仕です。料理・掃除・洗濯・買い物。これらは修道会における「手仕事」と本質的に同じです。イタリアの女性修道会では、共同体の食事を作ること・修道院を清潔に保つことは、重要な修道的実践として位置づけられています。主婦の仕事はその構造と全く同じです。本会はこの視点を大切にします。
子育ては霊的実践です。子どもの世話をすること・子どもに食事を与えること・子どもの話を聞くこと・子どもを抱きしめること。これらはすべて、愛の具体的な行為であり、修道的な奉仕の実践です。子育ての疲れの中にいる方々に、本会はこう伝えたいと思います。あなたは今、最も具体的な形で愛を生きています。
疲れることは許される。修道生活において、疲れは弱さではありません。イタリアの修道会の伝統の中には、「疲れた修道女は神に愛されている」という言葉があります。精一杯働き、疲れ果てて夜に祈る。その祈りは、完璧な状態で捧げる祈りよりも、むしろ神に近いかもしれません。本会は、疲れた方・余裕のない方・完璧にできない方を排除しません。
共同体としてのつながり
本会の修道士ライフは、個人の実践であると同時に、共同体の実践でもあります。
メンバー同士は、オンラインを通じて定期的につながります。月に一度のオンライン共同祈禱会・制作報告・近況共有の場を設けます。互いの生活・制作・祈りの近況を分かち合うことで、物理的に離れていても「ともに生きている」という共同体の実感を持てる場を作ります。
祈りのパートナー制度として、本会ではメンバーがペアを組み、互いのために毎日祈り合う仕組みを設けます。特別な言葉は必要ありません。「今日も○○さんのために祈りました」というひとことのメッセージが、共同体の絆を深めます。
創作の分かち合いとして、月ごとに制作したもの・書いた言葉・作った音楽・描いた絵を、メンバー間で分かち合う場を設けます。評価ではなく、励まし合いの場として機能させます。
イタリアの修道会から学ぶもの
本会が特に参考にするイタリアの修道会の伝統として、以下の要素を挙げます。
美しさを大切にすること。イタリアの修道会は、礼拝・食事・日常生活における「美しさ」を霊的な価値として重視します。花を飾ること・丁寧に食事を整えること・部屋を清潔に保つこと。これらは単なる審美的な習慣ではなく、神への礼拝の延長として行われます。本会においても、日常の美しさを意識することを推奨します。
音楽と歌を祈りとすること。イタリアのカトリック修道会は、グレゴリオ聖歌をはじめとする音楽の伝統を大切にしてきました。本会においても、歌うこと・音楽を作ること・音楽を聴くことを祈りの一形態として位置づけます。
マリアへの信心。イタリアのカトリック修道会において、聖母マリアへの信心は共同体の霊性の核心に位置しています。本会は特定の宗派の教義を強制するものではありませんが、マリアの姿――神の呼びかけに「はい」と答え、日々の生活の中で信仰を生き抜いた女性――を、すべての女性メンバーにとっての精神的なモデルとして提示します。
温かさと厳格さの共存。イタリアの女性修道会は、食卓の温かさ・共同体の笑い声・日常の小さな喜びを大切にしながら、同時に祈りの時間においては深い厳格さを持ちます。本会もこのバランスを目指します。日常は温かく、やさしく、柔軟に。しかし祈りの時間においては、誠実に、深く、妥協なく向き合います。
祈りの時間の厳格さについて
本会の修道士ライフにおいて、柔軟性が認められる部分と、厳格さが求められる部分があります。その区別を明確にします。
柔軟性が認められる事項として、祈りの形式・場所・姿勢、日課の細かい時間帯、使用する祈りのテキスト、日課以外の活動の内容と時間配分があります。
厳格さが求められる事項として、朝の祈りと夜の祈りの毎日の実施(形式・時間は問わないが、実施そのものは省略しない)、週に一度の特別な祈りの時間の確保、月に一度の共同体としての祈禱会への参加(オンライン可)、金曜日の節制の習慣、他のメンバーのために毎日祈ること があります。
本会はこの厳格さを「規則」として課すものではありません。しかし、修道的生活の深みは、続けることによってのみ生まれます。習慣になるまで続け、習慣になったら深めていく。その積み重ねの中に、修道士ライフの真の豊かさがあります。
修道士ライフへの参加方法
IHS ベツレヘム修道会の修道士ライフへの参加は、以下の段階で進めます。
第一段階として見習い期間を設けます。期間は3ヶ月です。本会の日課・週課を自分の生活の中で実践し、月に一度オンラインで近況を共有します。この期間は義務や評価ではなく、自分に合った形を見つけるための探索期間です。
第二段階として准会員への移行を行います。見習い期間を経て、本会の生活様式への親和性を確認した上で、准会員として正式に迎えます。
第三段階として正会員への移行を行います。准会員として一定期間活動した後、本会の理念・会則・生活様式に対する深いコミットメントをもって、正会員として受け入れます。
どの段階においても、強制・強要は一切ありません。自分のペースで、自分の生活に合った形で、修道士ライフを実践することを本会は尊重します。
お問い合わせ
修道士ライフへの参加・見習い申し込み・ご質問は以下までご連絡ください。
修道会・霊性・生活全般:1225@ihs.church
クリスマス・サクラメント・礼拝関連:1225@ihs.christmas
「主よ、あなたは私たちをご自身のためにお造りになりました。 私たちの心は、あなたの中に安らうまで、やすらぎを得ることができません。」 ― 聖アウグスティヌス『告白』より
「愛するとは、ともに生きることです。」 ― IHS ベツレヘム修道会 活動理念より
IHS Bethlehem Church / ベツレヘム修道会 一般社団法人 活動拠点:関東 / オンライン全国 / 国際

